戦場のハローワーク (講談社文庫) 加藤 健二郎 講談社 2009-12-15 |
「さあ、あなたも戦場に行こう!!」
まえがきより
「行動しないで後悔する人生を選ぶか、それとも行動し突っ込んだ上で後悔する人生の方がよいと思うか。危険を冒してでもやりたいことをやる生き方と、やりたいことをやらずに身の安全を第一とする生き方と、どちらが自分の人生を大切にしているのか。これらへの答えとして、私はできる限り「行動して突っ込む」方を選んでいきたいと思うようになった。」
で、突っ込んだ先が「戦場」という、「他に突っ込む場所がなかったのかよ」言いたくなってしまうほど、大胆な行動に出た戦場ジャーナリストの加藤 健二郎さんの体験をまとめた本。
まずは、目次を紹介。
プロローグ 戦争とは究極の道楽である
●そうだ戦争行こう
飯を食うのに困らない生き方
●ニカラグア
戦場はときにナンパ天国だったりする
●エルサルバドル
ギャルナンパとバスジャック同行取材の関係
●イラン
イスラム圏で本当にナンパは御法度か
●ユーゴスラビア
戦場帰りで英雄になる
●日本人の命の価値は案外高い
●ホンジュラス
戦争国の隣にある楽園
●イラク戦争と「人間の盾」
戦争時のイラクはバックパッカー天国だった
●アフリカ
現地で金を稼ぎたければ……
戦地突入 まず戦場に辿り着くこと
●ニカラグアの場合
とりあえず「ジャーナリスト」宣言
●パキスタンの場合
嘘八百を並べてプレスカードを取得
●クロアチア・ユーゴの場合
大手やベテランのプレスと渡り合う第一歩
●トルコの場合
戦地突入はタイミングが命
●コソボの場合
個人の才覚が左右する戦地突入術
●イランの場合
報道ビザを取得できずに取材離脱
●潜入!! 密林ルート
反政府ゲリラと川下り
●エルサルバドルの場合
政府軍にとりあえず勝手に密着同行取材
●戦車戦
密着!! クロアチア軍VSセルビア軍
●国境越え1
ロシア軍包囲下のチェチェンへ突入
●国境越え2
空爆下のユーゴへは逮捕されて入国
●NGO
肩書きや美学など戦場では二の次
●北朝鮮の場合1
招待団として入国
●北朝鮮の場合2
密入国敢行
●イラクの場合1
調査団として入国
●イラクの場合2
「人間の盾」になる
●ニカラグアの場合
鉄橋建設技術者として信頼を得る
●チェチェンの場合
義勇兵に紛れ込む
●グルジアの場合
チームを組んだゆえの失敗
開戦前夜 戦場に行く前の準備
●必需品
取材のために準備するもの
●携行品
荷物は身軽に小さくが基本
●現地情報
マスコミ報道の裏を読む
●言語
外国語はギャルをナンパして習得
●戦争国到着
戦場野郎の溜まり場を探す
サバイバル 戦場で生き抜くために
●砲撃戦
弾丸の下で考えるべきこと
●ジャングル戦
敵は下痢と迷子になること
●市街戦
わずか一秒が生死を分ける
●鉄橋攻防戦
失敗、被弾、負傷、逃亡
逃走・脱出 生きるための逃げ方
●コスタリカ
CIA(たぶん)に逮捕される
●エルサルバドル
治安警察の追っ手から逃げる
●イラン
日本大使館に見捨てられる
●コソボ
隠し撮りの後は高級レストランで食事を
●南アフリカ
マリファナ密売の元締めとタッグを組む
売り込み 戦場取材で稼ぐ方法
●総合誌
雑誌に売り込む手順
●専門誌
単行本を出す最短ルート
●TV・講演
稼ぎの単価は出版物以外がデカい
●周辺ルポ
戦場の周辺はネタの宝庫である
●万国共通取材ノウハウ
海外で得た経験を国内で活かす
●自衛隊ルポ
戦場ルポと自衛隊ネタの甘い関係
●戦場バブル
こんなご時世だから戦争ネタは不況知らず
●失敗ネタ
案外儲からなかった北朝鮮
エピローグ 戦争屋という名の職業
●軍事評論家
日本のお国柄ゆえにオイシイお仕事
●戦場カメラマン
武器を撮れば金になる
●単独行動第一主義
コーディネーターはいらない
●戦争屋は隙間商売
ライバルゼロの世界へようこそ
●戦争屋の休暇
趣味に生きられる気楽な毎日
●デビュー当時
戦争取材だけでは食えなかった頃
著者はまず冒頭で、いきなりサクっと言い切ってしまう。
P14
もし戦場未経験者の人が彼らに「戦場へ行きたいんですけど」と相談をすると「危険だからやめたほうがいい」と渋い表情で言われることが多い。それは新規参入者に自分のマーケットを食われるのを恐れているからだ。つまり彼らがそうしてまで独占して守ろうとする「戦争屋」という職業には、それほどオイシイ面があるということである。
目次の最初の方を見ていただけるとすぐに分かると思うのだが、加藤さんの戦場ジャーナリストになった動機が、「女の子とイチャイチャしたいから」という一般的には極めて不純な点が好印象(笑)
もしも「正義の為に」という感じのコンセプトの本だったら、こちらも少し構えて、突き放したドライな視点で読むことになったと思うが、ラフにラフに正直な視点で書いているんだなと思えた瞬間に、スラスラと文章の世界に入ることができた。
というわけで、著者は戦争取材で行った現地でとにかく女の子をナンパするし、現地妻を作るし、もう大変(笑)
でも、「戦争現場の真実を」とか「ジャーナリズムに乗っ取って」とかいう本に比べると、この本の方がなんだか「現実」って感じがするような気がする。
「戦場で女の子をナンパした武勇伝」がひたすら披露(しかも画像付き)された後、次に実際の戦場でのエピソードが展開される。これがまたハチャメチャで、嘘をついて無理矢理入国したり、義勇兵になって参加したり、ゲリラに参加したり、と思ったら政府軍に密着してたり、等。
もし、著者が日本国内で同じような事をしていたら、ただの「ろくでなし」か「極悪人」にしかならないのだろうけど、それが戦場だからこそ読んでいても違和感なく受け入れる事ができる。
日本フォーカスで世の中全てを見ようとする事が、なんたる無意味な事であろうか。
その後は、戦場へ行くための準備や心構え、必要な道具は何か、実際に何を取材すると良いのか、戦場ではどのように立ち回ると安全か、帰国してから各メディアにどのように売り込むのが効果的か等、これから本当に戦場に行こうと考えている人の為のアドバイスが続く。
こんな実践的な戦争本は初めてである。
読んでいると高い確率で「あ、自分も戦場取材できるかも」と思えてしまうという、ある意味危ない本なのかも(笑)。
この本を読んで実際に戦場に行く人が増えても、著者の性格を察するに特に責任は取らないだろう(笑)。
むしろ「ようこそ楽しい世界へ」と喜んでいそうな気がする。
ところで、戦場系でいうと、渡部陽一さんのブログも定期的に興味深く読ませていただいている。
http://yoichi4001.iza.ne.jp/blog/
渡部さんも加藤さんも、一般的に珍しい生き方をしているのかもしれないけど、人間として正直に生きているという感覚を受ける。
正直に生きている人たちって、世間からは「ムチャクチャな人生」とか呼ばれる事が多々あるのかもだけど、もしかしたらそれくらいが人が生きる上ではちょうど良いのではと常々思っている。
「人生、ムチャクチャであれ」
なんというか、そんな感じかなぁ。
破滅的ではなく、ポジティブな意味で。
個性を爆発させた人や、本や、音楽って、それに触れていると、とても面白いし興奮する。
極めて端に立っているんだけど、絶対に落ちないような人。
何か、見えない仕組みで彼らは落ちない技術を持っている。
でも、立ち位置は極めて危険。
その器用なのか不器用なのか、良いのだか悪いのだか、正義なのか悪なのか、良く分からない、その”良く分からなさ”が見えた瞬間に強烈に魅了される。
そしてこう思うんだ。
「あなたは自分らしく生きている」
と。
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