【映画レビュー】「人のセックスを笑うな」山崎ナオコーラ 原作


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原作は男性目線、映画は女性目線。

最初、山崎ナオコーラさんの原作を読んで、
「女性である作者が、どうしてここまで男性目線で物語が書けてしまうのか!!」
と、衝撃を受けてしまい、映画版にも興味を持ち観てみる事に。

しかし、観ていて何か違和感が。
それは「1カットが長い」という事。
正確に測ってはいないが、1カットで平均2分ずつくらいはあると思われる、長いシーンになると1カットで5分以上あると思われるシーンも。
そして、その1カットはほとんど構図が完全固定(Fix)された状態。
何分間も同じ構図でカットが切り替わるわけでもなく、映画が進んで行く。

最初は、この「構図固定」「1カットが長い」という二点に激しい違和感を感じ。
「ダメだ、こんなの素人が作った映画みたいで観てられない」
と、15分で断念してしまった。

しかし、少し時間が経ってから、何か気になる引っかかりを感じ、もう一回観てみる事に。
そして、気がついた。

「あ、これは、わざとそういう手法で撮影しているんだ」
と。

そして、
「これは、もしかして凄い事かも」
と、思ってきた。

普段自分が見慣れている映画等の映像というのは、大変忙しい。
数秒でカットが変わって、構図がドンドン入れ替わる。
そして映像的にも派手だ。
自分はスッカリそれに慣れてしまっていたし、それが当たり前だと思っていた。

一方、この映画のように、カメラ固定、長回しで何が起こるかと言うと、
「映画を観ている」という感覚が薄れてきて、まるで
「日常生活をプライベートカメラで盗撮している」ような錯覚に陥る。

そう、映画(フェイク)っぽくないからこそ、思いっきり日常的(リアル)に見えるんだ。

そして、なんといっても、長いカット達を役者陣はぶっ続けで演技をしているという凄さ。
この映画は「カップル成立直後の初々しい二人りやりとり」なシーンがたくさん出て来るんだけど、
「カメラ固定」「長回し」の二つが重なり、そのあまりのもリアルな錯覚をさせる手法に、

「これは全部、脚本通り???」
「結構アドリブも入っているんじゃないの???」

と、疑ってしまうほど本物のカップルに見えてしまう。
それくらい「映画的」ではなくて、「日常的」なのだ。

そして見終わって思った。
「この監督凄い」と。

どちらかと言うと、
原作は「男性目線」の恋愛観が、
映画は「女性目線」の恋愛観が強く描写されている印象を受けた。
なので、映画を観た時に、原作を読んだ時のような
「男心をそこまで見抜かれてしまった衝撃」
というのは特に感じる事はなかったが、別の衝撃を感じる事のできた素晴らしい映画。

原作と映画、合わせて鑑賞される事をオススメします。

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